元・伊藤忠商事マンが提言。「50代からのインターンシップ」が人生を最高に面白くする理由

こんにちは、長尾屋の長尾和(ながお やわら)です。

今日は、少し刺激的なテーマかもしれませんが、「50代からのインターンシップ」についてお話ししたいと思います。

「え? インターンシップって学生がやるものでしょ?」
「この歳になって、若造の下で働けってこと?」

そんな声が聞こえてきそうですね。わかります。私自身、元々は伊藤忠商事というTHE・日本の大企業でバリバリの商社マンをやっていましたから、その感覚は痛いほどよくわかります。

でも、だからこそ言いたいんです。
「会社の看板」が通用しなくなる日が来る前に、一度でいいから外の世界の風を浴びてみてほしい、と。

今日は、私が商社を飛び出して、裸一貫で世間に放り出された時に感じた「孤高」と、そこから見出した「希望」の話を交えながら、なぜ今、私たち50代にこそ「インターンシップ」的な経験が必要なのか、その理由を書き綴ってみたいと思います。

少し長くなりますが、同世代の友人とお酒でも飲みながら話しているつもりで、気楽に付き合ってください。

「役職定年」の足音が聞こえるあなたへ

正直に聞きます。今、楽しいですか?

50歳前後になると、会社の中での自分の「上がり」が見えてきますよね。「あいつも偉くなったな」とか「俺はこの辺止まりか」とか。そして多くの企業で導入されている「役職定年」。給料は下がり、部下はいなくなり、これまで積み上げてきたプライドと、これからの会社生活のギャップにモヤモヤする……。

「大企業に勤めていれば安泰」と言われたのは昔の話。今は、定年後の人生の方が長いかもしれない時代です。

私が伊藤忠にいた頃、会社の看板は絶対的な武器でした。「伊藤忠の長尾です」と言えば、大抵のドアは開いたし、誰でも話を聞いてくれました。
でも、独立して「長尾屋の長尾です」と名乗った瞬間、そのドアは重く閉ざされたままでした。「長尾屋? 何それ? 美味いの?」というレベルです(笑)。

あの時の無力感といったらありません。
「俺は個人の力で仕事をしているつもりだったけど、実は巨大な組織の力に守られていただけだったんだ」
そう痛感させられました。

もしあなたが今、会社の看板なしで勝負しろと言われたら、何ができますか?
もし明日、会社がなくなったら、誰があなたに仕事を頼んでくれるでしょうか?

こう問いかけられると、少し怖くなりませんか。でも、この「怖さ」に気づくことが、新しい人生のスタートラインなんです。

なぜ今、「大人のインターンシップ」なのか

そこで私が提案したいのが、「大人のインターンシップ」です。
これは必ずしも、会社を辞めてどこかの企業に再就職しろ、ということではありません。週末だけ手伝うプロボノでもいいし、副業が許されるなら週1回のアドバイザーでもいい。
重要なのは、「今の会社の常識が通用しない場所」に身を置くことです。

特に面白いのが、スタートアップ企業やベンチャー企業です。

1. あなたの「当たり前」が、誰かの「宝物」になる

私たち50代が長年培ってきた「ビジネスの基礎体力」は、実はものすごい価値があります。
挨拶の仕方、名刺交換のマナー、契約書の読み方、リスク管理、根回しの技術……。大企業にいると「息をするように当たり前」のことでも、若い起業家たちにとっては「喉から手が出るほど欲しい知見」だったりするんです。

私が独立後、ある若いベンチャー社長の相談に乗った時のことです。彼らは素晴らしい技術と情熱を持っていましたが、大手企業との取引口座の開き方がわからず困っていました。
私が「こういう手順で、こういう資料を準備して、キーマンはこういう部署にいるはずだから」とアドバイスしただけで、彼らは「魔法みたいだ!」と目を輝かせて感謝してくれました。

「ああ、俺がやってきた泥臭い仕事は、無駄じゃなかったんだ」
そう思えた瞬間でした。
自分の経験が、誰かの役に立つ。この実感こそが、50代の枯れかけた心に火をつけてくれます。

2. 「教える」のではなく「学ぶ」姿勢が若返りの秘訣

ただし、勘違いしてはいけないのが「指導してやる」という上から目線の態度です。これは絶対にNG。
今の若い世代、特にデジタルネイティブな彼らの感性やスピード感、ITツールを使いこなす能力は、正直言って私たちより遥かに上です。

「インターンシップ」という言葉を使ったのは、ここが肝心だからです。
先生として行くのではなく、「新入り」として彼らの文化を学びに行くんです。

Slackでのコミュニケーション、Zoomでの商談、合理的な意思決定プロセス。最初は戸惑うことばかりでしょう。でも、そこで「俺たちの時代はこうだった」と説教をするのではなく、「へぇ、今はこうやるんだ! 便利だね、教えてよ」と言えるかどうか。

プライドを捨てて、若者から素直に学ぶ。
この「知的な若返り」こそが、後半の人生を豊かにする一番の特効薬だと私は思います。

人生を面白くする「越境」の効果

私はよく「越境」という言葉を使います。
慣れ親しんだ「村(会社)」を出て、言葉も通じない「隣の村」へ行くこと。

商社マン時代、海外の駐在先でトラブルに巻き込まれ、現地の人と必死に交渉して問題を解決した時のあのアドレナリンが出る感じ。あれに近いものを、日本のベンチャー企業の中で感じることがあります。

会社の看板を外した「生身の自分」で勝負するワクワク感

長尾屋として活動を始めてから、私は「GIVEの精神」を大切にしています。
見返りを求めず、まずは自分が相手の役に立つこと。困っている人がいれば、自分の人脈を使って解決策を持っている人を紹介する。
そうやって「お節介」を焼いているうちに、不思議なことに「長尾さんに相談すれば何とかしてくれる」という評判が立ち、仕事が向こうからやってくるようになりました。

これは、伊藤忠の看板があった頃には味わえなかった快感です。
「伊藤忠の長尾さん」ではなく、「長尾さんという人間」にお願いしたいと言われる。
50歳を過ぎて、自分の名前で指名が入る喜び。これを知ってしまうと、もう会社の役職なんてどうでもよくなってきます(笑)。

泥臭い人間関係の中にこそ、チャンスはある

AIだ、DXだと言われる時代ですが、結局、ビジネスを動かすのは「人」です。
特に私たち世代の強みは、この「泥臭い人間関係」を構築する力にあるのではないでしょうか。

以前、あるプロジェクトで行き詰まっていた時、昔の取引先のおじさんにふと連絡を取ってみました。
「久しぶりですね、ちょっと相談があるんですが」
そう言って飲みに行き、膝を突き合わせて話すと、メール一本では絶対に動かなかった事態が、翌日には解決していたことがありました。

デジタル化が進む世の中で、こういう「昭和的な調整力」はむしろ希少価値になっています。
スタートアップの若者たちが苦手とするこの領域を、私たちが「インターンシップ生」として黒子に徹してサポートする。
そうすることで、彼らは事業を加速させ、私たちは新しい世界を見せてもらう。
これぞまさに、世代を超えた最強のタッグだと思いませんか?

まずは小さな一歩から。「終わりの始まり」ではなく「第二の青春」へ

「インターンシップ」なんて大層なことを言いましたが、要は**「会社の外の世界に、自分の居場所を作ってみませんか」**という提案です。

いきなり副業を始めたり、転職活動をしたりする必要はありません。
まずは、社外の勉強会に参加してみる。
面白そうな若者がいたら、話を聞きに行ってみる。
自分の専門知識が活かせそうなボランティアを探してみる。

そんな小さな「越境」の積み重ねが、あなたの人生の後半戦を劇的に面白くしてくれます。

50代。
定年へのカウントダウンをして過ごすには、あまりにも長すぎます。
でも、新しいことに挑戦するには、十分すぎるほどの経験と知恵を持っています。

私は今、毎日が本当に楽しいです。
商社時代よりも収入は不安定かもしれません。でも、精神的な自由と、毎日新しい発見があるワクワク感は、何物にも代えがたい財産です。

「50代からのインターンシップ」。
それは、私たちがもう一度、自分の足で人生を歩き出すための、最高にエキサイティングな冒険の始まりです。

さあ、あなたも会社の看板をそっと横に置いて、一人の人間として、新しい扉を叩いてみませんか?
その先には、あなたがまだ知らない、最高に面白い景色が広がっているはずですから。